山行記録2010/8 黒部峡谷 (くろべきょうこく) 【三日目】
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(二日目:剱岳より続く)
【日程】 2010年8月9日(月)
【天気】 曇時々晴
【メンバー】 学生時代からの友人Y.U、会社の同僚N.I
【概要】 「剱沢テン場−剱沢雪渓−ハシゴ谷乗越−内蔵助谷−黒部ダム−ロッジくろよん」
最高到達点標高2,529m、歩行距離14.7km、標高差-1,273m、累積標高差+1,022m−2,071m
剱沢雪渓
【ルート】
一般的なガイドブックには載っていないルート。
一応「一般登山道」にはなっている。(バリエーションルートではない)
ポイントは、
・剱沢雪渓下りを楽しむ。(先月白馬大雪渓も行ったし、一夏に三大雪渓の二つを満喫するプラン)
・内蔵助谷という黒部峡谷上流部を楽しむ。(下の廊下は、この時期通行止めだが、その上流部を歩く)
・アルペンルートの混雑を逃れ、大自然の中を下山。
・アルペンルートの高コストを免れる。(経済的理由)
情報が少なく、甘く見ていたが、これが結構ハードなルートだった。
また、リボンやペンキは多くあるものの、道標が少なく、自分で地図を見ての判断が求められるルートでもあった。
特に、真砂沢ロッジ以降、ハシゴ谷乗越への取り付き部は、地図にないルートが正解だったようで、地図通り行ったらヤバかったも・・・。
この地図は、国土地理院測量結果「数値地図12500(地図画像・・・Web閲覧サービス゛「ウォッちず12500」)」「数値地図50mメッシュ(標高)」をもとに、KASHMIR 3Dを用いて作成したもの。
以下、本文中に掲載のカシバード画像も同様。休憩地点は、白四角の地点だ。
【所要時間】
場所 |
剱沢 テン場 |
剱沢 小屋 |
雪渓 取付 |
休憩 |
真砂沢 ロッジ |
落とし物 捜索 |
休憩 |
休憩 |
ハシゴ谷 乗越 |
休憩 |
内蔵助 平 |
ビバーク ポイント |
昼食 |
休憩 |
内蔵助谷 出会 |
休憩 |
橋 |
黒部 ダム |
ロッジ くろよん テン場 |
計 |
標高(m) |
2,529 |
2,470 |
2,160 |
1,810 |
1,762 |
1,763 |
1,835 |
2,018 |
2,023 |
1,769 |
1,700 |
1,671 |
1,578 |
1,328 |
1,256 |
1,280 |
1,281 |
1,449 |
1,480 |
-1,273 |
区間距離(km) |
0.3 |
1.7 |
1.4 |
0.4 |
1.1 |
0.2 |
0.6 |
0.1 |
1.0 |
0.9 |
0.4 |
0.4 |
1.0 |
0.2 |
1.0 |
0.7 |
1.2 |
2.1 |
14.7 |
|
累計距離(km) |
0.3 |
2.0 |
3.3 |
3.8 |
4.9 |
5.0 |
5.6 |
5.7 |
6.7 |
7.6 |
8.0 |
8.4 |
9.3 |
9.6 |
10.6 |
11.3 |
12.5 |
14.7 |
||
着時刻 |
- |
6:17 |
6:55 |
7:46 |
8:17 |
9:20 |
9:51 |
10:32 |
10:53 |
11:25 |
12:20 |
12:25 |
12:59 |
14:30 |
15:00 |
15:50 |
16:25 |
17:10 |
17:57 |
11:47 |
発時刻 |
6:10 |
6:17 |
7:06 |
7:57 |
8:31 |
9:30 |
9:59 |
10:39 |
10:53 |
11:39 |
12:20 |
12:43 |
13:49 |
14:42 |
15:00 |
16:01 |
16:30 |
17:23 |
|
|
区間タイム |
0:07 |
0:38 |
0:40 |
0:20 |
0:49 |
0:21 |
0:33 |
0:14 |
0:32 |
0:41 |
0:05 |
0:16 |
0:41 |
0:18 |
0:50 |
0:24 |
0:40 |
0:34 |
8:43 |
|
区間タイム小計 |
- |
1:38 |
1:57 |
1:13 |
1:20 |
1:54 |
0:34 |
8:36 |
||||||||||||
所要時間累計 |
0:07 |
0:45 |
1:25 |
1:45 |
2:34 |
2:55 |
3:28 |
3:42 |
4:14 |
4:55 |
5:00 |
5:16 |
5:57 |
6:15 |
7:05 |
7:29 |
8:09 |
8:43 |
8:43 |
|
標準タイム |
- |
1:40 |
2:00 |
1:00 |
1:20 |
1:30 |
0:40 |
8:10 |
||||||||||||
標準タイム累計 |
- |
1:40 |
3:40 |
4:40 |
6:00 |
7:30 |
8:10 |
|||||||||||||
歩行速度(km/h) |
2.5 |
2.7 |
2.1 |
1.2 |
1.3 |
0.5 |
1.0 |
0.4 |
1.8 |
1.4 |
4.5 |
1.5 |
1.4 |
0.8 |
1.2 |
1.8 |
1.8 |
3.8 |
1.7 |
・標準タイムは、Y.Uが持っていた地図のタイムを採用。
・前半は、ほぼオンタイム。剣沢小屋からルートを間違えたが、その分を雪渓下りで挽回できた。
・後半は、標準タイムをオーバーした区間がある。
・内蔵助平については、場所が特定できていないので、その影響か?実際の歩きで見ると、それほど遅くなかったと思われる。
・内蔵助谷出会以降の遅れは、雪渓の通過に手間取ったもの。
・小屋(テン場)着は、18時前とかなり遅いが、このコースは行程が長く、こんなものでしょう。
・休憩は時刻を緑字で表記。大休止は太字。
断面図で見ても、
・ハシゴ谷乗越への登り返しが、かなりきつそう。
・最後の黒部ダムへの登り返しも、疲れた体にはやばい。
ということは予想できたが、楽そうに見えた内蔵助谷の下りと、川沿いの水平区間が、意外とくせ者だった。
・内蔵助平(下図では真砂岳分岐付近)の水場がよくわからなかった。(結果、昼食の機会を逃した)
・内蔵助谷(下図では、昼食〜水平区間手前)が悪路だった。
・後半の雪渓横断が危険。(水平区間の赤四角)
【はじめに】
朝予定より1時間早く起床。
昨日とは逆に他のメンバーを起こす。
出発も予定より早く6時過ぎにできた。
今日は長丁場である。
余裕があるに越したことはない。
【これより本題】
まず、剱沢小屋まで下る。
ここから雪渓に向かうのだが、間違って登山訓練所の方に行ってしまった。
踏み跡はあるのだが、周りの草に覆い隠された道で、明らかにおかしい。
一旦、小屋の方に戻ると、ルートが見つかった。
角度が変わると、剱岳の表情も違ってくる。
もうすぐ見納めか?
雪渓の下は空洞になっていて、水がじゃんじゃん流れている。
ここは滝のようになっていた。
こんな状態では、危なくて雪渓歩きはできない。
更に下ると、雪渓にロープが渡され、進入禁止となっていた。
下から雪渓を登って来た場合、ここから地道に上がれということのようだ。
我々は下りなので、ここから雪渓歩きができるということだ。
軽アイゼンを装着する。
平蔵谷から、剱岳が垣間見えた。
この雪渓の上部に、カニの縦バイがある。
右側は、源次郎尾根。
反対側には、滝が雪渓に流れ込んでいる。
こちらは長治郎谷。
映画「点の記」で測量隊が登頂したルートだ。(どこで撮影したかは知らないが)
奥に見えているのは、八ッ峰か?
ヘルメットをかぶったクライマーが、こちらに何人か進んでいった。
八ッ峰から剱岳に登るのだろう。
雪渓ルートは、ヘルメットの人が多く、一般トレッカーは少ない。
一旦地道に誘導される。
アイゼン外すのがメンドイ。
どうやら雪渓の下が空洞になっているためか?
今年は雪が多く、真砂沢ロッジテン場すぐ近くまで雪渓が残っていた。
昨日剱岳の後でここまで下る案もあっのだが、剱沢でマッタリしてしまった。
そのせいで、今日は長丁場が残っている。
しかし、雪渓の下りは朝の方が雪が締まっているし、方角から見ても朝の方が景色がよい。
メリット・デメリット相半ばだ。
前述の通り、この先は道がわかりにくい。
道標には「ハシゴ谷乗越」なんてどこにも書いてないし、遠くのペンキを発見して、そちらに行きかけた。
たまたま仙人池の方から来た人達に教えてもらい、「ペンキのルート(地図にはこちらが載っている)は荒れているから行かない方が良い」「下流の橋を渡ったところに正規のルートがある」とのことで、そちらに向かう。
疑心暗鬼で進むと、確かに橋があった。(せっかく教えてくれたのに疑って申し訳ない)
剱沢雪渓も遠くなった。
これで見納めか?
登りに取りかかると、こちらは悪路だった。
これでもマシらしいから、地図通りに行かなくて良かったって感じ。
途中で、ザック外側に取り付けてあったサンダル紛失に気づき、川まで戻ったが、見つからず。
徒労に終わった。
真砂沢ロッジから橋までの区間で落としたらしい。
高度を稼ぐと、視界が開け、対岸の山が見えてくる。
かなり険しい。
すれ違った二人組から、この先はやばい的なことを言われ、脅された。
先は長いというのに・・・。
この二人、黒部峡谷に手こずり、確信犯的に?内蔵助平でビバークしたらしい。
それほどきつい道なのだと・・・。
「ハシゴ谷乗越」というだけあって、上部はロープやハシゴの連続。
ロープの所は、下がザレた急坂でロープなしでは無理って感じだった。
なかなか変化に富んだ道だ。
最上部辺りの平坦になったところで、葉っぱに隠れた木の根を踏んでしまい、捻挫。
とりあえず休憩して様子を見る。
幸い軽く済んだようで、普通に歩くことができた。
こんなところで歩けなくなったら、進退窮まるところだ。
たいしたことが無くて、ほんとに良かった。
ピークよりちょっと下ったところがハシゴ谷乗越(はしごだんのっこし)らしい。
地べたに標識がおかれていた。
ただの分岐のようだが・・・。
一気に下ると、傾斜が緩んで、岩ゴロになってくる。
途中で休憩。
登って来た単独の若者も、この先の道はやばいという。
みんなして口を揃えて、そんなに脅すのだから、よほどの道なのかも知れない。
さて、この辺りが内蔵助平(くらのすけだいら)のようだが、標識も何もないので、どこかわからなかった。
川原におり橋を二つ渡る。
この時点で、明らかに内蔵助平を過ぎている。
水場があるはずだが、どこかわからない。
まさか川の水ってこと?
藪こぎをしたら、いかにもテントを張った跡のようなビバークポイント(ちょうどテント一つ分の平地)があった。
ハシゴ谷乗越ですれ違った二人は、ここでビバークしたのだろう。
腹も減ったし、食事にしようと一旦荷物を下ろす。
たまたま登って来た人達に水場の在処を聞くと、すぐ先にあるとのこと。
そうと聞けば、もう一度荷物を担ぎ直し、水場を目指すことに・・・。
ところがである。
行けども行けどもそれらしいものはない。
もしかして、崖からあちこち流れ出しているこの水のこと?
かなり歩いたところで、これはおかしいということになり、狭い道で荷物を広げ、昼食にすることにした。
このまま行くと、水の入手ができない恐れがあったのだ。
この時間なら、通る人もいるまい。
この湧き水でラーメンを作ることにした。
Y.Uが持ってきた浄水ボトルが威力発揮!!!
飲み水も作る。
予定が狂って、ちょっと遅い昼食となった。
棒ラーメンがまいう〜。
食後の梨で完全復活。
内蔵助谷は、とにかくろくでもない道だ。
崖に細い道が付けられている。
鎖がないと怖いかも。
こんな崩壊地もある。
道が無くなっているが、どこを通っても良い感じ。
川原で休憩。
大きな岩がごろごろしている。
あそこが内蔵助谷出会(くらのすけだんであい)のようだ。
左に行くと下の廊下(しものろうか)。
右に行くと黒部ダム。
ロープで下る。
内蔵助谷出会より、下の廊下を望む。
下の方に写っている橋を越えて行くが、現在通行止め。
きっと残雪で危険なのだろう。
歩けるのは秋のみらしい。
行く手に雪渓登場。
これがくせ者だったのだ。
さて、こいつはどうやって越えれば良いんだろう。
高巻こうとしたが、イマイチで引き返す。
登山道の延長線で、雪渓の上に登ったところで、Y.Uが足を滑らせ転倒。
危うくポッカリ空いた穴に落ちるところだった。
雪渓の下に落ちたら、ゴーゴーと流れている水量豊富な川にはまって溺れるかも・・・。
危険だということで、アイゼン装着して後を追う。
次の難題は、雪渓からどうやって下りるんだ?
ごらんのように細い丸太が2本渡してある。
Y.Uはそのままこの上を歩いて行く。
それって大丈夫?と思った瞬間、足を滑らせ落下・転倒。
2mくらい落ちたが、幸いけがはなかった。
しかし、反対側に落ちたら、雪渓の下にまっしぐら・・・。
悪運だけで乗り切ったが、ちょっと軽率だったと思う。
ここで事故を起こしたら、台無しである。
後続の二人は、クレバスに沿って、無事下りることができた。
二つ目の雪渓のところでぱらぱら雨が落ちてきたが、すぐにやんで良かった。
こちらの雪渓は段差もなく、アイゼン装着で安全歩行。
何とか黒部ダムが見えるところまで来た。
まだ観光放水していて、豪快な飛沫が上がっている。
橋を渡る。
後はダムの高さまで登るのみ。
最後の力を振り絞る。
まだゾンビになっていないから、余裕がある方だろう。
林道に出ると、素晴らしい景色が出迎えてくれた。
あの山の麓の谷沿いを歩いてきたんだなぁ。
ダム展望公園に着くと、ちょうど放水が止まるところだった。
17時で終了なのだ。
最終のトロリーバスが17:30なのである。
ソフトクリームを楽しみに歩いてきたが、ダムの上の店は閉店直後でアウト。
仕方なく、自動販売機のジュースとタバコで済ます。
貸し切りのダムの上から、辿ってきた道のりを見渡す。
さっき渡った橋が小さく見えている。
よく歩いたものだと、感慨に浸る。
今日も達成感が大きい。
後半危ない目にもあったし、無事を祝う。
黒部湖畔をテン場に向かう。
テン場は貸し切りだった。
草の生え具合から見ても、満員ということはめったにないのだろう。
すぐ上にあるロッジくろよんで手続きをし、ビールを購入。
無事を祝して乾杯!!!!
メニューはタイ風カレー・海藻サラダ・シジミわかめスープだ。
ここは水が近くて使い放題で、楽ちんだ。
後の建物はきれいなトイレ。
標高が低いだけあって、ここには蚊がいる。
他の二人が引き受けてくれたのか、無防備の割には、自分は食われなかった。
食後のティータイム時は真っ暗だ。
見事な星空を見上げ、極楽極楽。
というわけで、三日目も無事終了した。
いつものように、テントで爆睡。
しばらくだべっていたので、寝たのは22時頃だったか・・・。
【日程】 2010年8月10日(火)
【天気】 晴
翌朝、足音で目が覚めた。
ロッジ宿泊客が朝のお散歩をしているらしい。
ということは、寝坊と言える時間帯だ。
しかし、今日はトロリーバスで下界に下りるのみ。
始発が遅いから、急ぐ必要がない。
ゆっくり朝食を摂る。
メニューは鮭茶漬け。
食後のティタイムもたっぷり。
ダムに向かうと、大勢の観光客とすれ違う。
観光放水も始まっていた。
昨日歩いた黒部峡谷を目に焼き付ける。
ここを歩くことはもう無いだろうな。
9:35発のトロリーバスで、扇沢へ。
この時間、下りはさすがにガラガラである。
すれ違った上りのバスは、超満員だった。
扇沢に着いたら、次は温泉だ。
早く4日分の汗を流したい。
車で葛温泉に向かう。
高瀬館の広々した露天風呂に浸かってご満悦。
貸し切りだった。
4日にわたる山行もこれでおしまい。
まあまあ天候に恵まれ、満足度の高い山行だった。
剱岳や内蔵助谷といった、なかなか骨のあるコースに挑んだだけあって、達成感が大きかった。
とにかくたいしたトラブルが無くて良かった。
感謝!!!!!!!!!
筋肉痛は無し。練習やトレーニングの効果か?
膝はやや鈍い痛みがある。
捻挫はたいしたことがないように思えたが、2週間たった今でも完治していない。
この状態で、今週末の山行は大丈夫か??
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